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感情や情緒は、国内総生産や死亡率のような数字や客観的なデータでは捉えることができない、つかみどころのないものです。世界ウィメンズヘルス指数の「メンタルヘルス」の項目は、前日に感じた好ましくない感情に関して個人に質問することで、情緒面での幸福状態を示す微細かつ重要なニュアンスを捉えています。

ギャラップ世界世論調査の協力のもと、世界全体のメンタルヘルスの傾向を明らかにするべく、以下の4つの質問(過去15年間行われてきたもの)が使用されました。
 

行われた質問:

あなたは昨日、次の感情を長時間にわたり経験しましたか?

  • 心配
  • 悲しみ
  • ストレス
  • 怒り

回答内容は、医療関係や政府のリーダーがメンタルヘルスのケアにおいて不足していることを理解し対処するにあたり、方向性を検討するために役立ちます。

COVID-19パンデミック禍で、個人、家族や地域社会にとって2020年は特に厳しいものとなり、多くの人々が大きな精神的苦痛を経験しました。実際に、心配、ストレス、悲しみや怒りを経験した人々の数は増加の一途をたどり新しい記録を更新しました。ストレスだけでも、世界中で1年間に35%から40%に増加しました。

10人中約4人の女性が、調査前日に長時間にわたり心配(40%)とストレス(38%)を経験したと回答した一方で、およそ4人に1人が、悲しみ(26%)と怒り(23%)を経験したと回答しました。

 

メンタルヘルスの影響は男女で不均衡です

世界保健機関は、精神的苦痛という負担は女性に偏っていることを示しています。

  • 神経精神疾患による障害のうち、うつ病性障害が占める割合は、男性の場合は29.3%ですが、女性の場合は41.9%近くを占めています。
  • 高齢者の精神衛生上の主な問題は、うつ病、器質性脳症候群、認知症であり、その過半数が女性に発症します。
  • 武力衝突、内戦および災害の影響を受けた人々、ならびに難民となった人々、合計5,000万人のうち、80%は女性と子供であると推定されています。
  • 女性が生涯で暴力を受ける確率は、16%~50%に及びます。
  • 女性のうち5人に1人以上は、生涯に一度はレイプ(強姦)またはレイプ(強姦)未遂の被害を受けています。1

 

世界におけるメンタルヘルスの高低

当指数の「メンタルヘルス」の項目(指数の項目は、基本的ニーズ、健康と安全性に関する意見、予防医療、個人の健康、メンタルヘルスの5項目)の得点は、最高点である台湾の89点から最低点であるイラクの39点まで広範囲に及びました。世界全体では、75歳未満の人において、19歳未満で初産を経験した人と同様に、好ましくない感情を経験する割合が高いと考えられます。

メンタルヘルスが最も良い状況の国・地域

「メンタルヘルス」の分野の得点が高いことは、その日にネガティブな感情を経験した女性が少なかったことを意味します。

指数全体で他の項目でも高得点であった台湾の女性は、メンタルヘルスの項目でも世界最高の89点を獲得しています。これは、多くの女性がネガティブな感情を経験していないことを意味します。実際に、悲しみ、怒りまたは心配を感じている台湾の女性の割合はすべて10%未満でした。カザフスタンとモーリシャスの女性も、2020年の同項目で高得点を獲得し、ストレス、怒り、心配、悲しみは、前年とほぼ同じで低いレベルでした。

 

メンタルヘルスが最も困難な状況にある国・地域

「メンタルヘルス」分野の得点が低いことは、調査前日にネガティブな気分を経験した女性が多かったことを意味します。

2020年にイラクからウガンダまでの地域で政治的または経済的な衝突が発生し、抗議が行われたことを受け、この地域の国々の多くでは、女性たちがメンタルヘルスの項目に低い点数を申告しました。2

2020年後半に不安状態が高まったイラクの女性の得点は、世界で最低の39点でした。イラクの女性の過半数は、好ましくない感情のすべてを経験しており、57%が前日に長時間にわたり怒りを感じていたと報告しています。

 

メンタルヘルスが重要である理由

ストレス、心配、悲しみ、怒りなどの感情はすべて日常の生活の一部です。しかし、これらの感情はときに人を打ちのめし、その人が日常生活を送る能力を損なう可能性があります。こうした感情は、不安、うつ病性障害またはその他の精神衛生的疾患など、より深刻な症状を引き起こしたり、感情そのものが何らかの疾患の症状であったりすることも考えられます。4

また、メンタルヘルスが心血管の健康状態と危険因子に対して好ましい方にも好ましくない方にも影響を与える可能性があることを示すエビデンスも増えています。5長期的なストレスにより引き起こされるホルモンの放出は、身体と心の問題を引き起こし、免疫系を弱めたり、がんの転移を早めたりする可能性もあります。6

世界保健機関(WHO)によると、国際的な開発目標を達成する上で、精神衛生が果たす役割についての認識が高まっています。うつ病は、障害を引き起こす主な原因の1つです。15~29歳の人では、自殺が2番目に多い死因となっています。重度の精神障害を持つ人々の平均余命は、本来は予防可能な身体的症状が原因で、20年以上短いといわれています。 

一部の国では進歩が見られますが、精神障害を持つ人の多くは、深刻な人権侵害や差別、偏見に悩まされます。7

WHOによれば、女性の不安など精神衛生上の多くの症状は比較的低コストで効果的に治療できますが、ケアを必要とする人々とケアを利用できる人々との間には、依然として大きなギャップが残っています。効果的な治療は非常に限られた人々しか受けられない状況が続いています。8

ウィメンズヘルスに関する5項目
ウィメンズヘルスに関する5項目

世界ウィメンズヘルス指数の5項目は、女性の平均寿命に大きく関連しています。

好ましくない感情、特にストレスや心配の発生率を減らすことは非常に大きな課題です。しかし、これを解決してこそ、ウィメンズヘルスに良い結果をもたらすことができます。

女性の健康上の問題に関する経験(「個人の健康」の項目)と食料を買う金銭的能力(「基本的ニーズ」の項目)は、いずれも好ましくない感情の発生率と関連しています。

当指数により、世界中のウィメンズヘルスに関する、基礎データが得られました。調査結果は、過去数十年におけるウィメンズヘルスの進歩がどれほど紆余曲折あり遅々としたものであったか、そして女性の利益がいかに脆弱であるかを表しています。しかし、メンタルヘルスを改善する方法は存在します。WHOは、啓発、ケアへのアクセス、効果的な治療法に対する投資を増やすとともに、新しい治療法や既存の治療法の改善方法を見出すための研究に対する投資を増やすことを推奨しています。8

世界ウィメンズヘルス指数が示すデータは、女性のメンタルヘルスに対する注目を集め、関連分野への投資拡大を目指すにあたり、健康衛生および地域社会のリーダーに改善の方向性を提示する助けとなり得ます。これが実現すれば、世界中のより多くの女性が自らの健康の恩恵を享受しつつ、家族、地域社会、社会全体、ひいては経済の繁栄を手助けできるようになります。

 

女性の健康は全世界の健康です

2020年版世界ウィメンズヘルス指数の詳細な調査結果を確認するには、レポートをダウンロードしてください 。